政府が「短時間正社員制度」のことを発信し始めました。
参考:ニュース「短時間正社員」
「短時間正社員の議論も…」国民民主の元副代表が男女の賃金格差めぐり政府議論を主導 テレ朝News
非正規雇用の転換を推進=「短時間正社員」議論加速へ―政府PT 時事ニュース
石破総理が所信表明演説 「短時間正社員」を活用へ テレ東BIZ
政府や総理が短時間正社員制度について言及し始めたことは、私にとって喜ばしい反面、少し違和感を覚える部分もあります。この制度は、私自身が中小企業向けに長年啓発してきた働き方のひとつであり、多くの現場で実践され成果を上げてきました。しかし、政府の動きを見ると、「非正規から正規」「女性支援」という特定のテーマにフォーカスされすぎているように感じられます。
本記事では、私がこの違和感を感じる理由と、制度が本来目指すべき方向についてお伝えします。
短時間正社員制度は、単なる「非正規から正規への転換」や「女性支援」のための仕組みではありません。本来の目的は、以下の通りです:
例えば、育児中の女性だけでなく、介護を担う男性や、セカンドキャリアを歩む高齢者など、幅広い層に恩恵をもたらす制度として機能するはずです。
政府が非正規や女性にフォーカスする姿勢には以下のような課題があります:
短時間正社員が特定の層に限定された支援策として認識されると、「働き方の柔軟性を提供する制度」という本質が薄れてしまいます。
例えば、育児や介護に関係のない働き手、特に若年層の男性やフリーランスなどがこの制度を「自分には関係がない」と感じるようになる可能性があります。
「非正規から正規への転換」に助成金を紐づけることで、制度を現実的に運用したい中小企業が「ハードルが高い」と感じる可能性があります。
政府が制度を普及させるために助成金や補助金を導入することは一見良いアイデアに思えますが、現場では次のような懸念があります:
補助金目的の制度運用
理念を伴わない「お金目当て」の企業が増え、制度の質が低下する恐れがあります。
短期的な成果重視
実際には制度が定着していない段階で助成金を受け取る企業が増え、結果的に「使い捨ての仕組み」になる可能性があります。
真剣な企業が不利になる
補助金を受け取らず、真面目に制度を運用しようとする企業が埋もれてしまうリスクがあります。
私が考える「短時間正社員制度」の理想の姿は、次のようなものです:
特定の層に限定せず、柔軟な働き方を求めるすべての人が利用できる仕組みとして運用されるべきです。
助成金を成果報酬型にし、「制度が実際に定着し、成果を上げた企業」にのみ支給する仕組みを検討すべきです。
中小企業の現場に合わせた柔軟な運用方法を提供し、働き手と企業の双方にとって価値のある制度にすることが重要です。
このような違和感を持ちながらも、私はこの制度の可能性を信じています。現場で得た知見を活かし、次のような取り組みを進めていきたいと考えています:
現場の声を届ける活動
中小企業や働き手のリアルな声を政策に反映させるための啓発活動。
広い視点での制度の普及
特定の層ではなく、「働き方改革の一環」として短時間正社員制度の可能性を広める。
理念を守るための啓発
お金や数字だけに縛られない、「人に寄り添う制度」としての意義を発信する。
短時間正社員制度が広がることで、多くの人に働き方の選択肢が生まれることは素晴らしいことです。しかし、その広がり方が制度の本質を損ねてしまうことは避けなければなりません。私はこれからも、この制度が「すべての人にとって働きやすい社会」を実現するための仕組みとして進化していくことを願い、活動を続けていきます。