研究発表「多様な働き方におけるはたらく幸せの研究」

2023年度はたらく幸せ研究会で 週2正社員プロジェクト代表の平井が分科会「中小零細企業におけるはたらく幸せを週2正社員で考える」を立ち上げました。
また、他の部分科会で同様のテーマであった「所属制約のない働き方(仮)の幸せ研究会」成瀬 岳人(パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 部長)と合同で最終的に発表資料をまとめましたので報告いたします。

まだ、アンケート調査の数も少ないので、今後の参考程度にとどめておいていただければ幸いです。

 

 

はたらく幸せ研究会 研究報告書【要旨】 

多様な働き方におけるはたらく幸せの研究 

研究者氏名:

成瀬 岳人 (パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 部長)
平井 良明 (株式会社イーハイブ  取締役)

Keywords:週2日正社員、複業、エンゲージメント

 
■研究テーマ

ひとつの雇用にとらわれない、週2日勤務や複業従事者のはたらく幸せの源泉を調査研究する

■研究メンバー

成瀬 岳人、平井 良明

■研究期間

2023年11月~2024年2月

要 旨(Abstract) 

本研究報告書は、労働人口の減少及び働く個人の価値観の多様化を背景として、複業、フリーランス、週2日正社員といった多様な働き方が増加している現状に焦点を当てた。この研究の目的は、多様な働き方が個人の幸せにどのように影響しているかを明らかにすることである。
研究方法として、複業や週2日勤務を実践する6名の実践者に対してインタビューが行われ、その結果を基に「はたらく幸せ」に関する共通点が抽出された。インタビュー項目には、現在の働き方への満足度、選択理由、幸せや不安を感じる瞬間、将来の働き方への希望などが含まれた。
研究結果から、ワークライフバランスの充実や自由度と自己実現の追求が選択の主な理由であることが確認された。また、現在の働き方に対する満足度は、以前の働き方と比較して高いことが示され、これは自由度、時間的制約の減少、安定性や社会保障の提供、自己実現やキャリアアップの機会が影響していることを示唆している。
研究を通じて、多様な働き方を選択する個人の「はたらく幸せ」を実現するためには、個々のニーズに合った働き方の選択肢の提供、ワークライフバランスの支援、キャリアアップの支援、社会環境の整備が必要であることが結論づけられた。
今後の課題として、より多くの調査対象者とそのバリエーションを増やし、調査・研究を継続することが重要であると指摘されている。また、調査内容及び研究・分析方法についても再検討し、多様な働き方を選択する個人と、その個人を活用する企業・組織の施策に資する研究を目指している。

 

はたらく幸せ研究会 研究報告書 

研究テーマ
「多様な働き方におけるはたらく幸せの研究」

2024年3月3日

研究者氏名:

成瀬 岳人(パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 部長)
平井 良明(株式会社イーハイブ  取締役)

Keywords:週2日正社員、短時間正社員、複業

■研究内容 

1.目的

 労働人口の減少、はたらく個人の価値観の多様化などを背景に、ひとつの会社のみに所属する働き方以外にも、複業(本業とサブの副業ではなく、複数の本業をもつ考え方)やフリーランス、週2日正社員・短時間正社員など、多様な働き方を選択する割合が年々増加している 。企業においても、大手企業では先端テクノロジー活用や新規事業、組織変革などの専門性の獲得のために、複業人材やフリーランス人材の活用が進んでいる。また、中小・零細企業では、週5フルタイム勤務での正社員獲得が困難になっていることから、週2日勤務など時短勤務者の活用を模索し始めている。このように、ひとつの会社・組織にのみ所属することを前提としない働き方が広まることで、多様な働き方を選択するはたらく個人の幸せの源泉は、ひとつの会社・組織に所属しフルコミットで働く際のはたらく幸せとは異なるのではないか、という問いに取り組むのが本研究の目的である。

2.研究方法

 筆者らは、それぞれ複業の実践者と、週2日勤務社員を雇用する経営者であり、本研究における多様な働き方を実践している。それぞれの実践領域において、複業者3名、週2日勤務3名にインタビューを行い、それぞれのはたらく幸せにおいて共通している点を抽出する方式で研究を行った。なお、調査対象n数が少数のため、あくまで本研究は今後の展開に向けた予備調査的研究として取り組んでいる。インタビュー項目は以下のとおりである。

<インタビュー項目>
Q1 今どんな働き方をしているか教えてください
Q2 なぜ、今の働き方を選択しているか教えてください
Q3 今の働き方に点数をつけるとしたら、10点満点中何点ですか?
Q4 以前の働き方に点数をつけるとしたら、10点満点中何点ですか?
Q5 点数の差異の理由は何だと思いますか?
Q6 今の働き方で幸せを感じるのはどんな時ですか?
Q7 今の働き方で不安を感じるのはどんな時ですか?
Q8 今後、目指したい働き方を教えてください
インタビュー対象者の属性情報は以下の通りである。
表1 <複業者インタビュイー属性>
ID    年齢    性別    現在の働き方
1    40代    女性    フリーランス
2    40代    男性    会社員+ 個人向けコンサルティング、研修講師
3    30代    男性    会社員 + コーチング、コミュニティ活動、ファッションコンサル(副業)
表2 <週2日勤務者インタビュイー属性>
ID    年齢    性別    現在の働き方
4    20代    男性    週12時間(3h×4日)、月で約50時間、在宅ワーク
5    30代    女性    週20時間勤務
6    30代    男性    週2.5日正社員として勤務し、残りをフリーランスで活動

3.研究結果

 インタビューの結果、今の働き方を選択している理由としては以下の共通項が確認できた。
1)ワークライフバランスの充実
 主に週2日勤務者・短時間正社員に理由として多く見られた。育児や自分の夢のためなどを理由に、主たる時間を割きたいが、それだけでは収入や生活が安定しないため、週2日勤務の働き方を選択している。週2日働くことで、収入の安定性や社会保障なども受けられるため、安心して自分の大事にしたいこととのバランスをとることができる。

2)自由度と自己実現のため
 主に複業者に理由として多く見られた。「会社員としてのキャリアとは別に、「自分」としての価値を高め、独立を目指したい」、「会社員時代の働き方に不満があり、自分の強みを活かせる働き方を探していた」など、会社員としての働き方に対する制約への不満から、複業や独立(フリーランス化)することで、自らがやりたいと思っていたことにチャレンジしている。

 インタビュー項目Q3、Q4では、今の働き方と以前の働き方(1社でのフルタイム勤務)での主観的スコアリング(10点満点)で定量的な自己評価を確認した。

表3:過去・現在の働き方に対する主観評価の差異

ID Q3:今の働き方に点数をつけるとしたら、10点満点中何点ですか? Q4:以前の働き方に点数をつけるとしたら、10点満点中何点ですか?
1  9点(+2)   7点
2  8点(+5)   3点
3  6.5点(+3.5)    3点
4 9点(+2)    7点
5  10点(+7)   3点
6 9点(+2) 7点

 

 Q5 点差の理由のインタビュー結果から以下のように分析した。総じて、現在の働き方に対する点数の方が高い結果(平均+3.58点)となった。点数差が大きい要因として、「自由度・時間的制約」、「安定性・社会保障」、「自己実現・キャリアアップ」が挙げられる。一方、点数差が小さい要因としては、「仕事内容への満足度」と「収入」が挙げられる。仕事内容への満足度が高ければ、収入が下がっても現在の働き方に満足している傾向が見られた。

Q6「今の働き方で幸せを感じるのはどんな時ですか?」のインタビュー結果から、現在の働き方で幸せを感じる瞬間は、4つのカテゴリーに分類できる。

1) 貢献・感謝
クライアントや周囲からの感謝によって幸せを感じている。

2) 自己実現・成長
自分の目標に向かって着実に進んでいると感じた時や、新しいことに挑戦できた時に
幸せを感じている。

3) ワークライフバランス
仕事とプライベートの両立がうまくいった時に幸せを感じている。

4) 自由度・自主性
自分のペースで仕事を進められる時に幸せを感じている。

Q7「今の働き方で不安を感じるのはどんな時ですか?」のインタビュー結果から、現在の働き方で不安を感じる要素は、3つのカテゴリーに分類できる。

1) 業務量・時間管理
業務量をこなせるか、時間内に仕事を終わらせられるか不安を感じている。

2) 収入・安定性
収入が不安定であることへの不安を感じている。

3) 複業間の仕事バランス
会社員としての仕事と副業の両立がうまくいかなくなるのではないかという不安を
感じている。

Q8「今の働き方を変えるなら、どんなところを変えたいですか?」のインタビュー結果からは、それぞれの異なる事情から、異なるニーズが確認できた。それぞれの課題は、業務量・時間管理、収入・安定性、ワークライフバランス、独立・キャリアアップに分類され、個々のニーズや価値観によって異なることが明らかになった。

4.考察


本研究では、6人の複業者および週2日正社員・短時間正社員の方々へのインタビューを通して、「はたらく幸せ」を実現するために重要な要素を模索した。その結果、以下4点の要素の必要性を導出した。

1) 個々のニーズに合った働き方の選択肢
調査結果から、「自由度・時間的制約」、「安定性・社会保障」、「自己実現・キャリアアップ」といった要素が、「はたらく幸せ」に影響を与えることが示唆された。人によって重視する要素は異なるため、多様な働き方の選択肢を提供することが重要と考えられる。

2) ワークライフバランスの支援
「業務量・時間管理」や「収入・安定性」といった不安要素は、「はたらく幸せ」の阻害要因となりえる。業務効率化ツールの導入や時間管理研修の実施、メンタルヘルスサポートの充実など、ワークライフバランスを支援する体制が必要と考えられる。

3) キャリアアップの支援
「独立・キャリアアップ」への意欲を持つ人々に対しては、キャリアカウンセリングやスキルアップ研修など、キャリアアップを支援する仕組みが必要と考えられる。

4) 社会環境の整備
週2日勤務・短時間正社員や、副業・複業がより一般的になるよう、社会環境を整備していくことも重要と考えられる。例えば、副業・複業に関する制度や税制の整備、社会的な理解促進などが考えられる。

 多様な働き方を支援するには、法整備等の社会環境整備や企業側の制度整備も時代に合わせた改革が求められる。また、対個人においても、従来の単線的なキャリア支援ではなく、複線的なキャリアを前提としたキャリア支援や、はたらく個人のウェルビーイングを実現するためのセルフマネジメントのリテラシー向上なども求められると考察する。


5.今後の課題と展望

 今回は、調査対象者が6名とサンプル数も限られていたため、今後も調査対象者の人数とバリエーションを増やして調査・研究を継続していく。また、調査内容および研究・分析方法についても検討しなおすことで、多様な働き方を選択する個人と、その個人を活用する企業・組織の活動や施策に資する研究としていきたい。


■引用文献
厚生労働省「副業・兼業の実態調査」
パーソル総合研究所「副業・兼業の実態調査」
第一生命経済研究所「急増する「副業者数」の分析 ~けん引役は高齢者~」
『週2正社員のススメ』著:平井良明、津森俊彦、池元正美、冨浪真樹(2023)
 

PDF: 「多様な働き方のしあわせに関する研究」報告書

はたらく幸せ研究会の分解での研究テーマの発表です。はたらく幸せ研究会の公式発表でないことをここに付け加えます。

 

参考 はたらくしわせ研究会